デンソーウェーブは、1970年代当時、まだデンソーの一部門であった頃から製造業向けにバーコードを使用したシステム開発を行ってきたが、1980年代に入り、世間でPOSシステムの研究が活発になると、バーコードスキャナの開発に着手するようになった。これは、かんばんの情報化に伴ってデンソーで開発されたバーコードかんばんシステムの技術をベースにしたものであった。当時、小売店舗で多くのレジ担当者を悩ませていたのは、すべての商品の値段を手入力することによる手首のしびれや、腱鞘炎であった。そのためワンタッチでバーコードを読み取る技術は市場から熱望されていた。
小売業界の中でも、特にコンビニ業界においては状況が深刻であった。レジ担当者は作業に迅速さを要求される上、豊富にラインナップされた商品、それぞれの値段を手動で入力しなければならなかった。また、既存のバーコードスキャナにおいても当時主流だったのはペンタイプで、バーコード上を一定速度で動かすコツが必要であり、読み取りが行えない場合は何度も動かして商品を傷つけてしまうこともあった。さらに、24時間フル稼働させる必要があったため、耐久性や安定的な操作性が強く求められた。デンソーウェーブは、そうした現場での課題に向きあい、1982年、独自に開発したCCDセンサを組み込んだバーコードスキャナ「BHS-200」を発売。商品に傷をつけず、また、印字が薄いバーコードも正確に読み取る機能も高まり、作業者の負担は大幅に減った。さらに、デンソーウェーブの営業スタッフは導入時のコンサルティングから調査・レポートまでのバックアップ体制を整え、安心して使用できるシステム構築に励んだ。
場所にとらわれずバーコードをスキャンしたいというニーズから、重さ440gの本体に、バーコードスキャナ、小型コンピュータ、バッテリなどの機能が一体化された世界初のバーコードハンディターミナルを市場に投入した。
「BHT-1」が世に出たことで、携帯性の向上がハンディターミナルの次なる開発の目標となり、その後は、小型軽量モデルが続々と登場していった。同時に、多機能性、読み取り性能の向上、長時間動作を想定した耐久性能にもこだわるようになり、列車の車内販売用に採用されるなど、幅広く利用されるようになった。
情報の大容量化、省スペース化という製造現場のニーズに応え、デンソーウェーブの技術チームは1994年、QRコードを完成させ大容量・高速読み取りを可能にした。
開発後は仕様をオープン化し、誰もが自由に利用できるコードとしたため、2002年にQRコードの読み取り機能を搭載した携帯電話が発売されると、アクセスの容易さやクーポン取得などの付加価値から、急速に世間に浸透していった。
携帯電話の普及に伴い、画面上に表示されたQRコードを読み取ることができる定置式スキャナを発売。携帯電話にクーポンを配信して、来客を促す施策に貢献する。また、イベント会場の入場ゲートに設置して、利用者がWEB上で購入したモバイルQRコードチケットを読み取ることにより、チケットの紛失防止や紙の印刷・送料などのコスト削減に貢献した。
その後はスマートフォンの普及に伴い、大画面に対応した「QK30」を発売。端末の変化に対応している。
主にアパレル業界の棚卸作業における時間短縮などに貢献してきた、RFID。1点1点商品を読み取るバーコードの運用では、それまで数日間かけてきたアパレル店舗での棚卸も、1万点の在庫を1人でたった数時間で行えるようになった。また、棚卸などの商品管理場面だけでなく、会計の場面でもRFIDの利用は進められた。それまでは商品のバーコードを1点ずつ読み取っていたが、テーブルにRFIDスキャナを設置し、そこに購入商品を置くだけで、値札についているRFIDタグの情報を瞬時にレジに入力することができ、スピーディな会計が可能になった。
2014年10月から食品類、飲料類、薬品類、化粧品類などの消耗品が免税対象となったことや、複数店舗が入居する商業施設で一括対応カウンターが増加していることを背景に、免税店向けソリューション市場が拡大してきた。その中で課題となっていたのが、訪日外国人観光客に対し、免税店での販売時に発行が義務付けられている「購入記録票」と「購入者誓約書」の作成に時間がかかることと、記入ミスが起こることであった。デンソーウェーブでは文書作成時に使用できるスキャナを開発。氏名や国籍をパスポートから読み取って各文書に転記することで書類作成工程の迅速化に貢献した。
デンソーウェーブの次なる取り組みは、店舗の中だけにとどまらないソリューションの開発だ。
デンソーウェーブは、35年間の「リテール革命」の原点となったバーコードの読み取り技術や、QRコード、IC、RFIDといった技術はもちろん、無線技術と、決済システムとの連携といったコアテクノロジーを、長年培ってきた。
それらの技術を組み合わせることで、新たな領域・用途に向けた価値を生み出そうとしている。
「革命」を起こし続ける、デンソーウェーブの挑戦はつづく。